荒々しく無機質なこれまでの海上輸送コンテナ建築に、上質な「モダン建築」という名の粋なジャケットを羽織り、デザイン&スペックを追求した建築を目指して。

先日、完成しオープンしました「TOMORAW Dressing」(名古屋市港区)で設計、確認申請、現場施工など経験したことをベースに、これからica associatesが取り組む「コンテナ建築の可能性」をレポートいたします。

準防火地域内に建築された店舗例(確認申請取得・完了済書取得)

外観はコンテナそのものの店舗例(確認申請取得・完了済書取得)

まず、海上輸送用コンテナを用いた建築の最大の魅力は、従来の建築と比較すると、構造体としてのコストが軽減できる事、そして工期が短いメリットが挙げられます。その一方、デメリットとしては既製サイズである以上、組合わせによるプランニングの制約と建築基準法による制約が挙げられます。

特に建築基準法による制約というのが、我々建築設計事務所としては大きな課題であり、これまでに、平成元年7月18日付け建設省住指発第239号や平成16年12月6日付け「コンテナを利用した建築物の取扱いについて」国住指第2174号、平成26年12月26日付け「コンテナを利用した建築物に係る違反対策の徹底について」国住安第5号などによってコンテナを建築に用いる事が厳しく、コンプライアンス的に手をつけれない状況でありました。※参考資料

そもそも荷物を運ぶ目的のコンテナを、人が安全に、快適に利用する空間として利用できるのか?建築基準法の色々な問題をクリアーできるのか?

そういった問題を一つ一つクリアーすることから、コンテナを利用した建築のプロジェクトはスタートしました。一番最初にクリアーしなければならない問題は、建築基準法をクリアーし、当然ですが合法建築でなければならいという事。法律では、海上輸送コンテナを建築に利用するという事そのものが考えられている訳ではありませんので、行政の意見や法解釈を幾度も繰り返し、規模や構造的な制約を受けながらも、建築基準法による問題をクリアーする方法を考えました。(※これに関しての詳細は控えます)

次の課題は構造耐力の問題。鉄のコンテナは何段も積み上げても通常の建築より強いのでは?とイメージではそう考えられますが、それは外壁を全く開けずに、規則正しく上部に積み上げた状態であればの話です。

コンテナを建築に利用する場合、出入り口、窓、間取り上など色々な理由で、コンテナの片面または両面の割と大きな範囲の外壁面を開ける必要があります。

つまり、この開口部を切り抜いた時点でコンテナの強度は一気に低下し、補強をしなければコンテナ全体が歪むほど弱体化します。その補強をするにあたり、補強する柱や梁の大きさ、また取り付け方(溶接)によって建築としてのスペックが決まってしまいます。

今回、TOMORAW Dressingの店舗建築で採用したコンテナは40ft(約12メートル)を2基を長手の面を接合した組み合わせとしました。

海外の事例(搬入時)

コンテナ建築例(海外)

道路に面する1基のコンテナは大きな開口とし、それらのサッシュの枠を60角のパイプ(コンテナの上下部の梁幅に合わせて)にてデザインと同時に補強をいたしました。内部も間取りの関係で面に対して60%を上限に開口部を設け、それらにも補強をいたしました。奥のコンテナに関しても内部は同じような開口とし、外壁面はエントランスドアと小窓の開口のみと壁面を割と残した構造としました。

それぞれのコンテナの接合は壁面、屋根面、基礎部で連結をし、それぞれセパレートな構造を一体化し、垂直鉛直荷重に対して非常に頑丈な構造体としました。そして今回のコンテナ建築は、コンテナのデメリットを全て取り除いた「建築」を目指しましたので、コンテナのデメリットである熱や音対策を考慮し、外壁面には高性能な40mmの断熱材を設け、屋根は鋼材で下地組をし断熱材を充填し、床は既存コンテナの上に新たに下地を組み、そこに断熱材を充填した作りとしました。

音に関しては大きな道路に面しているという悪条件ではありますが、そこそこの防音性能です。

今回、コンテナを建築的にするにあたり問題と感じた点は、既存コンテナの精度です。世界の海の上を幾度もなく往来し、コンテナとしての役割を終えたコンテナということもあるのでしょうが、全体的な歪み(床、壁)は予想以上であり、下地調整で出来る範囲を超えている点です。

設計をするにあたり、それ相応の「逃げ」を設けるか、それもコンテナ建築の宿命と受け入れるかの何れかと感じたぐらいです。

工事に関する問題や今後の課題も今回、それを多く感じました。まずは施工会社が「コンテナを利用した建築」の経験のあるところが非常に少ないこと。つまり一般的な施工会社に依頼をすることが困難であったこと。(※今回は準備期間が短く初回ということもあり)

通常、設計事務所の仕事としては、確認申請を下ろし実施設計図書を作図し、施工会社に見積りを依頼して、オーナー様と請負契約を締結「一括請負契約」をして工事が入ります。それを現場にて監理をするのが本来の仕事ではありますが、今回は初めてではありますが、「分離発注型工事」という方法を選択することになりました。

現場で設計図書通りに施工できているか否かを監理する業務が、一変して材料や職人の手配や施工管理(設計監理とは全く別物)をすることになりましたから、それはそれでとても大変な作業の連続でありました。今後は、通常通りに施工会社に一括請負契約をすることがクオリティーや保証、工程管理など安心できると感じました。

次回は、「コンテナ建築」だからこそ出来る参考プランやデザインの可能性などに焦点を当てお話をしたいと思います。