間口5.5mに対しては奥行き32mのかなり細長い敷地に建つ鉄骨造の建物です。
元々、歯科診療所として新築されたのが、多分40年ほど前。（全く図面や資料など一切無く不明）それから色々とテナント店舗が入ったそうです。
現状調査、実測に行った際には、元々の設備配管や電気配線が残っており、更にテナントが変わる毎に追加されたり、改造されたような配管、配線で、かなり乱れた状態でした。それらを整理整頓をした上で、撤去する部分と新たにやり直す部分をしっかり仕分けをすることから始まりました。
仕上げ材も同様に継ぎ足し継ぎ足しで、これ以上そのような足し算の発想は止めて、ひとまずスケルトン状態の引き算を取り入れた発想で計画をしました。リノベーション工事の場合、設計図書で表現されにくい（既存図面が全く無いことも影響）事も多く、現場で迅速に判断することが求められます。今回はその連発でありました。
建物の内容は、1階部分は中古車販売店として車両の展示スペースと、洗車・コーティングなどを行う作業スペース。2階は32席のCAFEと商談スペースと事務所という構成です。
・国道一号線から見るファサード
概要としては、上記に述べたような感じですが、カフェは少し「和」を意識した空間としました。例えば、床はコンクリート打設後に墨汁を撒き、艶々のウレタンコーティングを施し、京都の町家の水を撒いた路地を表現しました。
天井や壁の一部には杉板の目透かし貼りと、温かみのあるナチュラルな材料であるのに対し、その一方ではガラススクリーンに車や料理のイメージ映像を流し、映像越しに透ける空間がレイヤー構成されていて、とても未来的な雰囲気を醸し出していたり、カフェの床の一部を大胆にガラス床とし、1階で自分の車の作業風景を眺めながらCAFEで飲食を楽しむという、車屋だからこそのコンセプトを空間に表現しました。
またエントランスの花壇は錆鉄プレートで製作し、黒竹と石で構成し、縁側のような木製のベンチを設置し、ここでテイクアウトしたドリンクなどを召し上がって頂くことも出来ます。
間口が狭く、正面以外開口部の無い、とても閉鎖的でクールな空間ではありますが、逆に時間の経過を感じさせない、とても落ち着いた空間になったと思います。
この場所に車好きな方が集まり、車を通して人と人が繋がり、美味しい食事を楽しんで頂ければと望んでおります。どうぞお気軽に愛車でいってあげてください。
・2階カフェからガラス床越しに見る
・黒竹
・ワークスペースから国道1号線を見る
・錆鉄で設えた花壇
・ハニカム照明
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所 撮影: 加納準
