久我山の駅に程よく近い住宅地に凛とした表情で佇む「久我山の家」
この家のテーマは「使い込まれて美しくなる経年変化」。スチールで組まれた薪ラックのアプローチを抜け、玄関にたどり着くと錆鉄(エイジング塗装)が施された重厚なドア。外壁はスイス漆喰を鏝で塗り上げ、玄関周りはブリック張り。駐車場はピンコロ(大理石)を敷き詰め、この家のコンセプトがそのまま現れている。
玄関からファーストドアである細い桟で組まれたスチールの戸を開けると、そこにはブルーの壁面に寄り添うように取り付けられたシャープな階段と、それに対面する薪ストーブ。この家は「大きなLDK」という発想は無い。リビング、サロン、ダイニング、キッチンと連続して繋がる空間構成となっているので、見た目の迫力こそ無いが、それぞれの空間に対してセレクトしたマテリアルやテクスチャーが生きている。
リビング、ダイニングの壁面に設けられた家具は全て造作オーダー品。大きなテレビが扉で隠せるようにしているところも面白い。キッチンは人工大理石の天板と銘木突板の組み合わせで、調理機器は全て輸入品。ガスコンロ前に張り上げたイタリア製ガラスモザイクタイルが華やかな雰囲気を演出している。
階段を上がったところは、吹き抜けに面するスタディーコーナーである。天板はステッチで縫製されたレザーを張り、しっとりとした雰囲気とし、床はウォールナットのヘリンボーンという手の込んだ張り方とした。少しでも奥行きを感じされる為に、階段側の壁はシルバー塗装のフレーミングデザインの鏡を取り付けた。夜の間接照明がとても綺麗で演出効果は抜群である。
それ以外に面白い部分として、子供部屋の床のカラフルな塗装。何種類かの塗装を用意して、丁寧にマスキングを施し弊社の代表の佐々木が自ら塗った。露出する柱もスタディーコーナーの天板と同様に、ステッチで縫い上げたレザーを巻きあげた。ダイニングの置くの淡いグリーンの壁は、鉄粉が配合された塗装を下地に塗り、磁石がつくようにした。
日常の暮らしの中で、美しいと感じる気持ちを育み、時間という空気をたっぷり吸いながらこの家はより美しく成長して欲しいとそう願っております。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(横浜) 撮影: 加納準