最初に御施主様にお会いした時に今でも印象に残っている御要望がありまして、それは土地の西側の環境が良くないので、西側には窓は1つもつけたくないという御要望でした。そうなると外観はミニマルな感じになり、窓をつけないという事は光をどこから取り入れるか・・・?そこからこの家の設計はスタートしました。実際に完成したこの家の西側には窓は1つも無く、2階の持ち出し部分と1階部分で色味を変え、シンプルながらも大きな箱が重なったような迫力のある外観となりました。
採光は建物の中心の中庭と、2階の南側にバルコニーを設ける事により、必要な箇所に必要な光を取り入れるよう計画しました。中庭は玄関扉を開けるとスリット階段の横にあるので暗くなりがちな玄関回りにもやさしい光を落としこみます。中庭には2階バルコニーに上がる外階段とキッチンからバルコニーへ向けての透過性の高い通路を設けたので、1階から2階、キッチンからバルコニーへの動線をプラスし、非常に回遊性の高い間取りとなっています。意匠的にもこの外階段と内階段が玄関土間から見ると重なり、面白い見え方となります。
2階はダイニングキッチンとリビングを完全に切り離し、それぞれを違った印象で仕上げています。キッチンはセラミックタイルで仕上げた、まるで箱のようなシンプルなキッチンです。写真はありませんがダイニングキッチンの奥に隠れている天井高1400㎜の広い納戸は実用性重視の収納力があり、この納戸の上に子供室を二つ設けています。ダイニングキッチンは1.5層の天井高となっています。
リビングは2階のトイレのを間に挟み、中庭とバルコニーに大きく面する位置に設け、東面は一部のモザイクタイル以外はほぼ開口部となっています。天井は一部をR天井にし、そこに照明をあて、床の段差部分にも間接照明を設けて夜の演出性を高めています。
最初の御要望を聞いた時点で、面白く、思い切った御提案が出来ると感じましたが、その予感は正しく、現場の最後までアレコレと良い方向にカスタマイズし実用性も兼ね備えた、外観からは想像し難い開放感溢れる家となりました。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(静岡)撮影: 加納準