都会のど真ん中にある大きなコンクリート造の6階建て建物をリノベーションした憩邸。1階はオーナーの経営する店舗であり、2階はオフィス階、3階より上階が住まいとなる。つまりはかなり大掛かりなリノベーション工事となった。
一番最初、オーナーのT様にお会いした時は、土地探しからの計画と言われていた。そんな中、僕が、土地購入+新築=リノベーション+別荘計画などという提案などをしてしまったものだから、どうやらリノベーション案にも興味が出て、実際に様々な状況から、今回の計画となった。まだ、これから別荘計画があるのではないかと、ひそかに楽しみに待ち続けてはいるのだが…
仕事場が同一場所にあるという関係上、ある程度、暮らしのスペースには、そういった要素を持ち込みたくなかった。できることであれば、音さえ完全遮断したいところだったが、防音装置採用は困難だったため、間取りレイアウトで対策をし、エントランスから少し長めのリビングまでのアプローチによって、プライベートへの切り替えスペースとした。動線的に優秀なやり方ではないが、気持ち的には大切なスペースになったかと思う。
リビング空間の床はタイル貼、そして薪ストーブを配置した。こんな街中の建物の中間層に薪ストーブがあると気付く人はいないに違いないと思う。イメージ的にはつまりは非日常の風合い。やや別荘に近い発想かもしれない。忙しい日々の中で、しっかりと家族の空間の中で寛ぐことができるように考えた。都会の真ん中で、しかしのびのびと開放的な空間になるように考えた。苦労の多い現場最中ではあったが、何とか実現できたのではないかと思う。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(名古屋) 撮影: 加納準