三重県津市(建設時は安芸郡河芸町)の海の前の土地に立ち、オーナー様と交わした会話。「ヨットような建物にしてください」と。60歳を少し過ぎたオーナー様は現役時代は教員であり、ヨットを趣味とされるロマン溢れるダンディーな方でした。
私たちに求められた条件は、賃貸建築である以上、収支バランス計算に基づいた建設費の厳守。階の構成としては、1階は事務所用途に使える賃貸。2階は賃貸住宅。そして3階にオーナー様の住まい(別荘的用途ですが)、そして屋上に上がって海を眺めれることでした。
そんなオーナーからの少ないリクエストではありましたが、一番厳しいのが「予算の厳守」。いざ設計が終わり、施工業者に見積もりを出すと、予想通りに予算オーバー。あの手この手で、コストを抑える努力をしましたが。ある一定のところまでしか落とすことができません。そうですクオリティーに影響を及ぼす恐れがあったたかです。神にすがる気持ちで、建築業者専門の新聞に「入札情報」を出して、施工業者を募り何とかギリギリクリアーしましたが、何とも言えないハラハラドキドキのスタートでした。
工事自体は順調に進み、現場監理で工事中の足場から眺める伊勢湾を眺めるのがとても気持ちよく、時間を忘れてボーと眺めるのがとても好きでした。ちなみに建物名称の「KAIKI」は漢字で書くと「海輝」 朝陽を浴びてキラキラと輝く工事中の建物から海を眺めて決めたとのことです。
これからも輝きを放つKAIKIで居続けて欲しいと願っています。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(名古屋) 撮影: 加納準