植物とともに暮らすのが大好きなT様ご夫婦。以前住んでいた家にも、集合住宅ではあるものの植物を大切にしながら暮らしていらっしゃいました。ご主人のご両親との2世帯住宅計画が始まり、計画地であるT様の実家を初めて訪れた時も、綺麗に管理された植栽の立派さに驚かされました。そんなわけで、大切に育てられた植物たちを無視した配置計画はできるはずもなく、既存の庭を残しながら、また2世帯住宅ならではのそれぞれの世帯との距離感を意識しながらの計画スタートとなりました。
両世帯共通の植物を軸に、ゆったりとした玄関までの外部空間は、多目的な用途に対応するようにし、子世帯、親世帯が、自然と集まることのできるような場所となりました。玄関はヒトツ。それ以外はすべてセパレートというスタイルの2世帯住宅。エントランス空間はしっとりとした不思議な質感を持つ土間空間で、そこを中心にして、それぞれの生活空間に割り振られています。ご家族それぞれの居場所をつくり、安心感と落ち着きのある暮らしになるようにレイアウトされています。
2階の子世帯スペースは、1階の親世帯と上下においても重なっておらず、生活音の伝達などの対策にもなっています。また、2階とはいうものの、外部とかなり複雑につながっており、地植えの木々を身近に感じることもでき、大きなデッキバルコニーに出ると、解放感も味わうことができて、居心地のいいスペースとなっています。T様は、この建物が完成し生活するようになってから、家で過ごす休日が増えたということをお話しされていました。ご夫婦ともお酒もお好きで、ご主人は愛煙家でもあるので、外部でのバーベキューパーティーはもちろんのこと、日常的に、夜はバルコニーで過ごすことが多いとのことです。
相変わらずの植物はお好きなようで、休日は可児市にある花木センターに行くのがお決まりの過ごし方のようです。これからもっと、魅力ある植物とのつながりを楽しめるような暮らしになっていきそうです。10年後、その後も楽しみな建物になりました。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(名古屋)撮影: 加納準