6m高もの石貼りのウォールが力強く圧倒するファサードでありながら、その外観からは威圧感を感じることはなく、大地の産物のおすそわけといった雰囲気が漂います。この家に住まわれるご家族は大らかで、スケール感が大きく、さらに優しさに溢れています。
旅の達人でもあるご夫妻、各国を旅された記憶や世界観を散りばめたようなインテリアをイメージしてまとめていきました。ブルーの壁に囲まれた白いドアから入るLDKは、アンティークがかった印象のトラバーチンの床、そして、奥の壁一面、天然石モザイクが施され、ヨーロッパの旧市街のような落ち着いた風格を醸し出しています。
ダイニングキッチンとリビングを間仕切る壁には、エタノール暖炉が組みこまれ、どちらからも揺らぐ炎を楽しんで頂けるレイアウトとなっており、格別のひとときをお過ごし頂けているようです。長さ3メートル×奥行き1メートル、迫力のアイランドキッチンは、ウォルナットのパネル+クオーツの天板でシックな装いながら、まるで黒蝶貝のようなガラスモザイクの壁面が華やぎを添えています。今回のような、オープンキッチンの場合、インテリアの一部として調和を優先させながら、機能や実用性を考慮してゆきます。「お料理をする時に、テンションの上がるキッチンがいい!」と言う奥様のリクエストに応えてのプランニング。家電・ダストボックスetc.できる限り、スッキリとしまう収納としました。
バス・パウダールームは、グレー・ブルーを基調にネロマルキーナのカウンターが施され、ホテルライクな仕上がりとなりました。トイレは、モロッコの鮮やかな色彩を感じられる空間となり、ランタンを象るタイルが賑やかに並びます。
ガラスモザイク、アクセントウォール、ジェルバゾーニのソファetc. 奥様のお気に入りの色彩、ターコイズブルーが随所に配されたことで、空間にリゾート感が加えられました。インテリア全般、何れも経年変化を味わえる素材を選び、現代的で洗練された要素と、時を経て使い込まれてゆく存在感の融合をテーマとしています。
LDKから眺めるテラスの緑が気持ちよく、やがて森のような雰囲気になるような植栽計画となっています。水庭の奥にはご主人の菜園が作られ、土壌改良からされているとは驚きです。この春、ご家族が増えられ、ますます賑やかになられたT様邸、お子様方の成長と共に、愛着深まる家に育ってゆくことを願っております。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(名古屋)撮影: 加納準