車、自転車、衣服、靴、そして家具など、たくさんある趣味の中で、とにかく気に入らないものはとことん引いていくというオーナー様のスタンスは、建築の設計計画にとっても、かなり大切な要素だと思います。
そしてこの建物のファサードがそれを物語っているようです。比較的大きな道路に面した、南東向きの立地ですので、気持ちの良い方へ開きたいがプライバシーも確保しなければならずその2つの矛盾を解消するアイディアが、建物と同じ高さまで伸びるこのスチールルーバーフェンスでした。
冬の季節には、部屋の奥まで日が差し込み、また前面道路から見上げると全てがシャットアウトされるように、ルーバーの角度を調整してあります。そのルーバーの横にひっそりと設けているエントランスドアを開けると、リビングと繋がるプライベートな屋外空間となっているのです。
自転車をディスプレイできるほどのゆったりとした玄関からLDKへ入ると、吹抜けから落ちる光と、それに照らされたレザーソファ、そして20cmほどの段差を設け、また床の素材を変えることで明確に分けたリビングとダイニングの役割が同じ空間の中でもそれぞれ独自の雰囲気を感じさせてくれます。
年を重ねるごとに、興味のあることは移り変わってゆくというご主人の思いが、この先の成長を楽しみにさせてくれる家です。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(横浜) 撮影: 加納準