新しく造成された敷地に計画された「殿村の家」。敷地は北東に扇形とした非常に特徴的な形状であります。北側の道路に対して駐車スペース4台を設け、最大限、南面に対して採光上開口部を設ける方針で設計をスタートしました。
道路面である北側と東面に対しては、必要とされる開口部のみとし、プライバシー性と防犯面を重視する一方、家の中から外部状況が読めない(見えない)という不安を解消する為に、玄関上部には横長のサッシュを縦に連続した配置をし、その窓から漏れる光がこの家の印象として映るように大胆にしました。
この窓の位置する空間はファミリールームと名付け、就寝前の家族の一時の安らぎの時間を過ごしていただけるような生活シーンを想像しました。ファミリールームにはロフトに上がる階段箪笥を造作で設け、その棚に書籍や玩具などを入れ、階段の段をベンチに見立て、この窓からの風景を眺めながら過ごすといった感じです。
北東の閉鎖的な外観とは対照的に、南に対しては可能な限りの大開口を設け、陽光の降り注ぐ、気持ち良い風が通るように致しました。玄関から入ると、目にするのは外部のアプローチから連続して同素材で続くタイルの渋い床と、その色とマッチングしたモールテックスの飾り棚の天板。このモールテックスはこの家にポイント的に随所に採用に、室内空間の統一感を出しております。
ファーストドアから約20帖のLDK空間に踏み入れると、モルタル仕上げのようなハードマテリアルな床材(建材)と、それと対比したような優しい表情のレッドシダーの羽目板の天井。天井の高さに合わせた2,400mmの大型サッシュに、キラキラと輝く細かなガラスモザイクタイルが空間に艶を与えます。
吹抜けのある階段ホールは、鉄骨で作られたスケルトン階段とし、ササラ桁と手摺を受ける支柱を鉄にペンキとし、踏面と手摺は木製をし、これもハード素材とソフト素材の組み合わせのハーモニーを奏でるマテリアルとしました。手摺はヴィンテージ建築にあるような大きめの笠木とし、重量感を感じさせるデザインとなっています。
この「殿村の家」は若いオーナー様にとっては現時点では、とても渋く落ち着いた印象に映るかもしれませんが、家族が増え年齢を重ねる事に、フィットしていくのではないかと、エスキースを考えた時から頭の中でイメージして形としました。
これから始まるこの家での生活ですが、家族皆様の落ち着いた、愉しい暮らしができるよう、ずっと見守っていきたいと思います。ありがとうございました。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(北陸)