母屋の裏側にヒッソリと配されたカクレミノ。目の前は重厚な日本家屋が近接しているものの、その周辺環境は自然豊かな魅力ある景色を持っていた。隣地の市の保有する山林は、いま、あまり見られることのなくなった里山の感が強い。この景色をいかに暮らしの中にさりげなく取り込むことができるか。そういったところから設計はスタートした。
柔らかなスマートさのイメージを感じさせるオーナーのM様のご家族に合わせて、室内のイメージは、木調ではあるものの、木目のおとなしい樹種を選んだ。1階の中央にはダイニングキッチンを配置し、その両端を、リビングと和室にした。回遊性と動線を考え、そのようになったが、その後の暮らしを拝見すると、正解だったのではないかと自画自賛してしまう。
リビングには薪ストーブを採用し、樹々に囲まれた雰囲気をより一層引き立て、天井は吹き抜けとし、ゆったりとした落ち着きを楽しむことができる。天井のレッドシダーのムラのある感じが、繊細なイメージの中に適度な荒々しさと遊び心を感じられる。森の中に山小屋を建てる感覚には、決してしたくなかった。山男が出てきそうなイメージになってしまうし、そのイメージがM様にはそもそもない。品があって柔らかなシンプルでクリーンな空間が、森の中にある、そういうイメージを目指し、実現できたと思う。
これからずっと、四季折々の自然の変化の中で、安心感と充実感のある暮らしを楽しんでいただけたらと心から思う。
設計監理: アイシーエー・アソシエィツ一級建築士事務所(名古屋) 撮影: 加納準