Re.Plan(再生設計)という選択

2016.06.04

Re.Plan(再生設計)という選択

「カウンター席だけの小さな、コーヒーとビールを提供するお店を考えたいんですが…」

控えめな性格のU様から相談を受けたのが約10カ月程前になります。当初は、新築をメインで検討されており、物件の候補のひとつの情報をお持ちになっての建築相談でした。その後、その候補の物件を下見に行ったり、予算のシミュレーションをしたりしていたのですが、よくよくお聞きすると、綺麗に仕立てられた空間よりも、むしろ、穴場的、隠れ家的なイメージを持っているようでしたし、「古材」という直線的なキーワードが出たりと、むしろ、古い建物のリノベーションのほうが、今回の計画のテーマにふさわしいのではと思われ、方向転換し、賃貸を含めた古く味わいがあり、ノスタルジック感のある物件を探すことになりました。

それほどこまめに連絡をしていたわけではなく、常に久しぶりの再会のような計画進行速度ではありましたが、ある時、「この物件で行こうと思います。」と僕の携帯電話に連絡が入り、雰囲気も予算感もよかったので、一気に進むことになりました。

そこは、以前にも飲食店があったようですが、その面影は全くなく、石膏ボードの下地がただれているような朽ちた空間でしたが、躯体はコンクリート造で、それをむき出しにするだけで、十分に魅力を持っていました。いわゆる「スケルトン」状態に戻すという考え方です。Re.Plan(再生設計)の第一段階です。再度設計を施すために、一旦余分のすべてを取り除く手法です。そうすることによって、再度躯体の魅力を引き出すことができるし、純粋に再設計ができます。そこに新たに付け加える要素を厳選し、新しい空間として生まれ変わらせることができるのです。そこにRe.Plan(再生設計)の魅力があるのではないでしょうか。

考えてみれば、名古屋スタジオのnu.bidg.も横浜スタジオもとても古い建物の再生から生み出されたものですから、僕たちの地の中にそういう思いは強くあるのでしょう。

古いものの持つ味わい深い質感を残しつつ新しいものと融合させ、独特の世界観を持たせるという面白さが、Re.Plan(再生設計)にはあります。車は旧車、服は古着、音楽はレコード、女は…、みたいな方には、新築ではないほうがいいのでしょうね.