2021.09.04
写真は現在施工中の富山県の「Casa diagonale」の煉瓦タイルの施工後(目地入れはまだ未施工)の写真と、家具の天板などに使用する予定のレザー生地の見本です。
この現場に限らず、他の現場やこれから施工が始まる現場でも、この組み合わせが多く、弊社的には定番となっているベーシックスタイルということになります。煉瓦はヴィンテージの本物の建物に使用されていた煉瓦をスライスしてタイル貼りができるように加工されているものや、セメントを主体材料として成型され、味わい深いエイジングに加工されたものなど様々あり、その用途やコスト面、施工性などを考慮してセレクトします。
上記の写真はベテランのタイル職人が張った例です。目地も通っていて、割り付けも綺麗でとても素晴らしい仕上がりですよね。一方、下の写真はあえて 目地幅にムラをつけ、タイルを汚す勢いで目地ともに塗りこんでいるような、とても荒い張り方です。
あえてと言ったのには理由があります。そもその煉瓦造建築(煉瓦の壁量で建物の構造として持たせる建築)は、あくまで煉瓦は今で言う「コンクリート壁」に変わる構造体でした。一個一個積み上げて、煉瓦の間をモルタルや漆喰で固めて構造的にしっかりと定着させる構造体なのです。
積み上がった美しさを特に求めることもなく、しっかりとした構造体を構築するのが目的でしたので、目地材がはみ出したり、目地が通っていなかったり、煉瓦そのものが目地で汚れたりとか、全くお構いなくの勢いの仕事が多く、それもそのはずで、煉瓦の上から仕上げを施すこともあり、職人は意識はしていなかったのでは?と、古いヨーロッパの建築を調べたり、文献図書を調べるとその事実が垣間見られます。
この写真の「荒い積み方の煉瓦」は、当時の下地である煉瓦を表現した雰囲気に仕立てた壁です。
目地が不揃いなので、職人がタイル目地を仕上げる目地鏝(こて)も通らないので「指押え」とし、その目地も積み上げた際に、上からの重力ではみ出したような感じに仕立てるために煉瓦を目地で汚して仕上げました。
写真ではうまく表現されませんが、実際はとても迫力があり、表面もかなり凹凸があるので、たった15mmの煉瓦タイルと思えない、本物の厚い煉瓦を積んでいるような感じにとなっています。
この現場はどこなのかをお話しすると、以前にブログにてご紹介しました三重県志摩市「迫子の家」(はざこ)の工事写真です。
この建物は築49年の廃屋直前の建物に、新たな息吹と魂を与え、志摩の地元工務店と弊社、オーナー様と一緒になって創意工夫をしながら進めている現場です。
床の木が腐って抜けていたり、配管はボロボロだったり、どこから手をつけていいのか、どうデザインをしていいのか、図面化するのも実は大変でした。
写真は、元々壁だったところに大開口の窓を設け、真下の海を眺められるようにしました。木製の太い枠は構造の梁の役割もしています。煉瓦壁の前には鋳物の薪ストーブを、錆鉄で拵えた「鉄の座布団」の上に鎮座させ、その前の床はヴィンテージテイストのイタリア製のタイル。造作家具の天板はレザーで仕上げたり、まるで昔からこの空間がそうだったような空気感になるように悩みまくってコーディネートしました。
工務店の仕事と設計事務所、オーナー様のセルフビルド工事と、しっかりとしたスケジュールで管理されていないですが、予定では今月の末ぐらいには、ひとまず一期工事は完成しますので、改めてその時は全貌をご紹介できると思いますので、楽しみになさってください。