路面電車の走る街(富山)

2016.07.09

路面電車の走る街(富山)

生まれて初めて富山を訪問したのは今から2年10ヶ月前の2013年9月5日。人生で初めての富山に来た日だ。その日のことはよく覚えているが、日付まで覚えていないので、その日のFacebookに投稿したから遡って調べた。

最初に来た街は富山でも歴史のある高岡市。当分、高岡市が僕の中で全ての富山だと感じてしまうぐらい、この街しか知らなかった。決して綺麗に整備されているとは言いがたい古い街並みの道をゆっくりと長閑に走る路面電車を見たとき、時間が止まっているのか、これが普通のサイクルなのかを考えてしまったぐらい僕の中では強烈な印象を持った。

よく富山の方から「なんで富山に進出したのですか?」とよく聞かれる。 実は自分でもわからない。今でもわからない。会社としてデータを集めて緻密に計算をして仕事を取りにきたとかは全く無いし、初めて来た理由は、ある仕事が片付き少し気持ち的にエスケープをしたかったところに、たまたまFacebookで知り合った方が富山の高岡に住んでいらっしゃったので尋ねたまでである。

そんな無計画で気儘な僕のスタイルを、地元の方はたいそう珍しく面白く思ったのか、色々な話を聞かせてもらったり、色々な方を紹介してくれた。

富山では「旅の人」という言葉がある。字の如く、地元では無い人のことを指す言葉らしいが、何となく蚊帳の外にされた感の漂う冷たい言葉だと当時は感じる一方で、逆に都会から来た風変わりな僕に対して歓迎をしてくれていることのギャップを感じずにいられない気分だった。

そういった交流をしているうちに、一軒の住宅の依頼を「旅の人」である僕を指名していただいた。これが、富山で僕が燃える切っ掛けになった富山での初めての仕事である。

この家の設計、監理をさせていただいている最中に、また依頼をいただき、それをしている間にまた頂きと・・・こんな感じで富山での実績が作られ、完成した建物は「太閤山の家」、「新湊の家」、「立山連峰を眺める家」、デザイン監修をしたコンテナショップ「BARBERDOG」、エステティックサロンの「VITA」、ガレージハウスの「Glecine Lengo」、「金泉寺の家」、「万葉の家」、「海老江の家」の9件が完成した。

そして、現在施工中が高岡の「城東の家」、富山の「秋吉の家」。そして設計中の案件が高岡「泉の家」、富山「造園家の家」といった具合である。

VITA(富山市)

Glecine Lengo(富山市)

新湊の家(射水市)

前述したように、僕は富山で燃えている。いや、富山以外でも燃えているが、その燃え方とは少し違うかもしれない。それは、この数年で僕が感じた富山の素晴らしさと逆にそうじゃない部分を理解した上で、もっと富山の住宅シーン、ライフスタイルシーンを変えていきたいと思う野望である。とは言ってみたものの、たかが一人の設計士が何を出来るのかと言われてしまうだろうが、決して諦めていない。

自分の暮らしを心底楽しむ家のあり方を提案し、たまの外食に飛びっきりのお洒落をして出掛けれるレストランを提案し、海に面する県だからこそマリーナや海沿いを上手く計画をして街として魅力あふれるような建築を提供したいと本気だ。

この豊かな自然に囲まれた富山は本当に美しい県である。魚や野菜など食べるものも美味い。しかし、北に海、それ以外の方向は山・山・山・・・そいった風土であるが故に知らず知らずのうちにそうなったのか、やや閉鎖的な部分も感じる。他人の目を気にし、自分の意見をあまり言わない。自虐的な発言も多い(富山なんて…とか) そう感じたことがある。一応、僕なりに言葉を選んで話をしているつもりだが、酷い表現だと言わないで欲しい。僕はもう「旅の人」では無いと自分ではそう思っているから。

たかが一軒、されど一軒。暮らしを変えるのは金だけじゃない。愛と勇気と努力でしょう。じゃあ

RIMOTAILとBARBERDOG(富山市)

海老江の家(射水市)

万葉の家(高岡市)