いよいよ始動(千葉県船橋市/集合住宅)

2016.07.11

いよいよ始動(千葉県船橋市/集合住宅)

昨年の9月に設計監理契約を締結させていただき、あるタイミングまでは順調に、基本設計、実施設計と移行し、施工会社数社の見積もりを出しこのままスムースに着工かと思いきや、全く値段が合わない。

私達の仕事は、格好よければ値段かどうでもいということは全く無く、設計依頼時に大凡の予算を提示頂いたものを、概算ながら積算をし、この計画では施工金額が安いとか高いとか(それはありませんが)を精査して業務に取り掛かります。

今回もいつもと同じようなフローで進めてまいりました。ただ当社の設計事務所は、木造住宅を多く手掛けており、価格の変動が大きい鉄骨造(今回はこれ)や鉄筋コンクリート造に関しては若干の不安はありましたが、ここまで金額が違うとは…

施工金額が高くなる理由は色々と複雑な要素が絡み合います。まず、契約当初と比較して、材料単価の高騰、需要と供給のバランス変化に伴う人員不足によるもの。(建築業界全体が人手不足です)、首都圏ではオリンピックに備えて、かなりの急ピッチで大型建築はもとより、改修工事などの小規模な工事まで非常に多くの工事があり、それに伴う材料及び人件費の高騰が大きく影響をしていると感じています。

次に、意外と見落としなのが建築設計事務所の場合、設計図を描き、それを現場監理という業務で実際の施工を比較をし監理する。つまり設計図書通りに作らなければならないので、施工会社としては現場で何かが発生したとしても、それを吸収するリスクヘッジ分のとしての予算を組まなければならない。設計施工の場合であれば、臨機応変に対応できることもそうはいかないという不安材料としての値段である。

最後は、当社の場合は前述したように年間の仕事の多くは木造住宅なので、仮に今回はお値打ちに見積もりを出したくても、今後の取引で鉄骨造の仕事の依頼がある可能性が少ないのでそうはならない。それも立派な理由である。

そうのこうのと胃に穴が開く思いでこの数ヶ月間、色々な施工会社と見積もり依頼→調整→再見積もり→調整→振出しに戻るという繰り返しであったが、それに終止符を打ってくれる一言を、先週状況報告にあがった際にオーナーから頂いた。

「こんなもんでしょう。安くするような調整もいいが、佐々木さんに頼んだ以上、最初のあの計画通りにしてください。任せていますから」と

予想もしなかった何とも有難い言葉を頂き、久しぶりに心が震えた。僕はオーナー様から一発二発のパンチは覚悟していたし、(冗談ですが)自分の当初の予算感の甘さに自虐的になっていた。

完成模型

室内のCG(初期案)

室内のCG(初期案)

この言葉だけでは無い、その裏に潜む人間としての愛情を感じた。非常に男前な対応に、僕も後十数年すればオーナーと同じような歳になるので、この対応はある意味今後の人生観を変えるような出来事にも思えた。

明日からの図面最終確認、建築確認申請提出業務と頭の中で整理しながら、逸る気持ちを抑えながら、眠い目をこつりながら、ながらながらで深夜の新東名高速道路を飛ばしています。…じゃあ

↓当初の計画のCG