小さくても上質で決して手を抜かない作り

2016.07.23

小さくても上質で決して手を抜かない作り

Vanden Plas かつて英国に存在していた車のメーカーをご存知ですか。小型車ながら荘厳なメッキのグリル、内装は、車内のあらゆる部分を柔らかなモケットで覆い、ダッシュボードにウォールナットのウッドパネルを存分に使用したり、ドアトリム上端にウッドキャッピングを施し、シートはなんとコノリーレザーをあてがい、分厚いクッションを使った上質なものを使用した。たった全長3.7m、排気量1,100ccの小さなサルーンに、大型高級車で培ってきた手法をそのまま持ち込み、前席背面には後席用の折り畳み式ウォールナット製ピクニックテーブルが組み込まれるなど、このサイズでショーファードリブンを意識した設計となっていた。どうだろう凄いよね。

小型ながら、優美なスタイルと豪華な内装で小さなロールス・ロイス、つまり「ベビーロールス」と呼ばれたこの車のコンセプトは、前述したように

「小さくても上質でいて決して手を抜かない作り」

そんなVanden Plasと、現在の国産の小型車メーカーとを比較するなんてことはかなり無謀で意味も無いが、どうもこの国では小型車というカテゴリーは大衆車であるということが大前提であり、当然安く買えることを望まれている。それはそれで当然ではあるが、それ以上のカテゴリーを求めない、いや求めてはいけないような考えがある。

平たく言うと、コンパクトカーは庶民カーだから、品質を求めたいなら大型高級車を買えと。コンパクトカーで品質なんか言っちゃ駄目だよ…そんな感じかな。

実際、本質的な部分よりも電子コンピュータの類いの家電品的な便利さをメーカーはこぞって競い、これが車なのか家電品なのか錯覚するほどである。使い物にならない見たくれを追い求め、それが本質で無かったことは、たった3年後の中古車を見れば歴然としている。

そういった考えが、実は住宅建築においても言われている。各住宅メーカーは、購入層のデータをベースに、価格や内容を上手にパンフレットに、いかにも素晴らしいように思えるよう構成して販売をしている。

「売り」となるポイントの大体は、約10年も経たずに使い物にならない玩具のような電気仕掛けの設備や、メーカー特許とかよくわからない金物だらけで固めた構造の安全性の主張。「長く良いもの」をと口先だけで言い、新しいシリーズが出来ると「今回はこれまでで最高」と、どの口で言っているんだと突っ込みたくなる考えや行動に、政治屋の人間と同じ香りがする。

正直、この手のメーカーの住宅には本当に飽き飽きしているし、だれかが改善しなければ、この先も繰り返し商売の為の家を提供され続けるだろうと、こんな僕でもかなり危惧している。何がいいたいのかは何となくわかって頂いたと思うが、ぼやきのブログでは無い。実はこの内容が次回に繋がることになるから、頑張って辛口で表現しました。笑

次は具体的に、なんと弊社のスタジオのある異国情調たっぷりの「横浜の街で暮らす」。そんなリアルなテーマで、僕が考えるコンパクトで上質な家の話をスケッチやイメージ写真を見ながらやりますので楽しみにしてくださいね。じゃあ