「横浜で暮らす」コンパクトで上質な家


建築設計事務所だから考えるコンパクトでいて高品質な家

2016.07.27

「横浜で暮らす」コンパクトで上質な家

先回のブログ「小さくても上質で決して手を抜かない作り」にて、コンパクトな英国の名車Vanden Plasを引き合いに話をさせていただいたが、今回はそのVanden Plasのような考えで、コンパクトで高品質な家とは一体どんな家なのかを僕なりに考えてみたいと思う。

そこで、ある特定のエリアにて考えないとイメージもコスト間も曖昧になり、説得力にかけるので、弊社の横浜スタジオのある「横浜」という場所をベースに考えたい。

名古屋本社の弊社の二番目の拠点として横浜にスタジオを出したのが、2007年2月でしたから、今から約9年半ぐらいになるだろうか。初めて横浜に足を踏み入れたのは、なんと中学の修学旅行のときです。どこに行ったのかは記憶にはないが、子供心に異国情緒溢れる洒落た街という印象だけ心に刻まれ、横浜という街をリスペクトしてきました。

ですので、関東出店=横浜 になったのはごく自然の判断であったように、僕の中で横浜とは古き良き時代の名残のある最先端の街であり、古い建物がどことなくヨーロッパ的でありながら、中華街のアジア的な強烈な部分もあり、アメリカを感じさせる大雑把な明るい雰囲気もあり、言葉では上手く表現できない、都会の海の街、格好いい大人の街、松田優作や藤達也なんかの癖のある人間が輝いて存在する街…とにかく話し出すと多分尽きない、それぐらい魅力的なところだと感じています。

だから、横浜スタジオ(最初は駅から徒歩圏内の西区でしたが)を出した時は、とても嬉しくて、毎週のように横浜に行けることが仕事とは言え楽しくて仕方がありませんでした。その時に色々なところを走りまくり、行きまくったことが、更に横浜を好きになったんだろうね。

数年前に名古屋に住まいを構えるか横浜に構えるかを悩んでいる時期があり、よく家族と色々なところに来ていたかな。今のスタジオのある青葉区や、街中の中区や遠くは鎌倉や葉山、逗子なんかも物件探しという名の下のドライブ話はかなり楽しかった。もし僕がその時に横浜に住んでいたなら、かなり横浜で建物の設計に携わっていたのかと思うと、若干残念な気持ちになるけどね。これからそうなるように頑張りたいね。しかし、完全に話が脱線しちゃった。笑

脱線ついでの話なんだけど、実は、若い頃に少し神戸に住んでいた時期があるんだけど、神戸も横浜と同じように異国情緒溢れる街として知れ渡っているよね。残念なことに阪神淡路大震災で多くの歴史的建築物は崩壊し、昔の神戸らしい風景は失いました。

崩壊ではないけど、横浜でも古い老朽化した建物は建て替えられたりして、少し横浜らしい建物から放つ雰囲気が弱くなっている…そう感じているので、今回の建物のデザインは横浜らしさを前面に出したのと、経年変化の美しい、建築後100年とは大袈裟だけど数十年後も普通に見れる時代を感じさせない美しさも目指してデザインした。

今回の建物は横浜の市内、しかも横浜らしい横浜である中区にある狭い20坪ぐらいの土地を想定した。たった20坪というが、横浜の街中で20坪といっても1,600万~2,000万はするし、そんな手頃の大きさの土地が出る可能性は意外と低い。前面道路が私道で道幅が2メートルとか、まるでマカオか香港かというような場所も意外と多く、それはそれで面白いと個人的には思うが。

みなとみらいの夜景

古い歴史的な建築物

古い歴史的な建築物

貿易の街らしい港の風景

横浜中華街

だから20坪という大きさ的には充分だと考えている。だって山下公園や湾岸や中華街やみなとみらいエリアに散歩できる距離だし、レストランやCAFEなんかも山ほどある。家で愉しむ要素と外で愉しむ要素を分別して考えると、逆にこれぐらいが丁度いい具合である。 

実際、敷地面積20坪で建蔽率60%容積率200%とすると、最大建築面積が12坪なので39.6㎡で延床面積としては40坪、132㎡だから充分すぎる。逆にそこまで大きな建物は必要が無い。

この建物の内容は玄関のような階段に続くホールと、1階に設けたホテルのような少しラグジュアリーな寝室とそれに付属するクローゼットとバスルーム。2階はだだっ広いLDK。といっても24畳程度だからまずまずのコンパクトで使い勝手の良い大きさだよね。キッチンはスペースが必要となるアイランド型では無く、壁につけるタイプのI型。大きさは2,550mmあればよい。僕は料理を結構するが、やたらめったにでかいキッチンよりも、これぐらいのサイズが丁度良いと感じている。キッチンサイズよりもデシャップスペース(配膳)が重要なんだよね実際は。

外観のデザイン

古煉瓦の外壁

古いイタリア車の内装的なインテリアかな

普通ならダイニングテーブル、チェアを置いて、リビングには革張りのソファーを置くなんて思うだろうが、この大きさでは少々きついので、それらを纏めた考え方のリビングダイニングをするほうが、よりラグジュアリーであり、品質のいい空間となるだろう。

今流行の腰の低いワイド&ロー型のソファーではなく、1950年代から60年代ぐらいのシンプルな厚い革でこしらえた、やや高めのソファー。3人が並んで座るなんてことはないし、いくらラブラブなカップルでも横並びに座るなんて窮屈だしリラックスできない。ここは潔くパーソナルソファーを3台。この奇数も大事なんだよね。笑

そのソファーに座って丁度、食事がし易い高さでこしらえるオーダーのテーブル。脚が複雑だと足に当たって使い勝手もよくないから、シンプルに一本足。天板は大理石かガラスがいいんじゃないかな。

道路側の面は全てガラス。防火性能を求められる街中だから、ここは昔ながらのスチールサッシュ。防火面とデザイン面の両立が図れる理にかなった考えだね。天井は一番高いところで約3メートル。奥に向けて徐々に低く絞られる天井高だから妙に落ち着く空間となる。

内装はタイルや大理石、オイルを染込ませた木、塗装、漆喰などを使って綺麗にシンプルにまとめる。あえて余計なデザインはしない。白いお皿に盛り付けられた美しい料理をイメージしてもらえればいい。

家の大きさは延床面積で24坪ぐらいだろうから、仮に坪単価100万円でまとめたとして約2,400万円。土地、建物、外構、諸費、設計料などを入れても5,000万ぐらいだろうから、この品質とこの場所でこの値段とは意外と狙い目な考えかもしれないね。まあ、ゴミゴミとした内容の部屋数の多い3LDKぐらいの分譲住宅もこの値段ぐらいだろうから、この計画の住宅は高いと言えば高いが、小さくても上質で決して手を抜かないコンパクトな英国の名車Vanden Plas住宅だからね。

もし興味があれば佐々木までいってください。冷やかし大歓迎です。笑